実例集

【実例|三方原町の家】平屋のように暮らす、2階建て。安心と心地よさの住まい。
【実例|三方原町の家】平屋のように暮らす、2階建て。安心と心地よさの住まい。

「三方原町の家」は、浜松市中央区三方原町に建つ、既存住宅の建て替え計画としてスタートしました。
これまでの住まいで感じていた不具合や不安を解消し、これから先の暮らしを安心して、心ゆたかに過ごすための住まいです。

 

お施主さまは、子育てを経験され、これからの暮らし方を見つめ直すタイミングにありました。
家族構成の変化や、将来起こりうる生活の変化も視野に入れながら、長く住み続けられる、変化に対応できる住まいであること。そして何より「心地よく楽しく暮らすこと」を大切に、設計を行わせていただきました。

 

住まいは、2階建てとしながらも、キッチン・浴室・寝室など、生活の中心となる機能を1階で完結できる平屋のような間取りです。また、暮らし方が変わったときにも無理なく使い方を変えられるよう、各空間に用途の幅をもたせた設計としています。

————————
敷地面積:196.77㎡(59.40坪)
1階床面積:81.15㎡(24.50坪)
2階床面積:23.18㎡(7.00坪)
延床面積:104.33㎡(31.50坪)

————————
設計/えん建築舎
施工/えん建築舎
外構/えん造園舎

リビングやダイニング、寝室など、ふだん過ごす場を道路から少し離して、落ち着いて心地よく過ごせるように。
駐車場は三台分を確保しました。

高低差のある土地。
小さな植栽スペースの横を、ゆるやかなスロープで玄関へと続きます。

玄関へのアプローチは深い軒の下。
強い横雨でない限り、濡れずに出入りできます。

玄関を入ったところ。
左側には、暖簾でやさしく仕切った収納スペースがあります。暖簾は視線をやわらかく遮りながら風を通す、日本らしい工夫のひとつです。

 

「玄関を入ったらすぐに手を洗いたい」とのご希望から、玄関右手にもうひとつの入口を設け、キッチンへ直接つながる動線としました。手洗い場を別につくるのではなく、キッチンや洗面所と兼ねることで、自然で無駄のない使い方ができるようにしています。

玄関ホールからLDK側を見たところ。

写真左の壁の向こうには物干しスペースがあります。窓は高窓とし、洗濯物が視界に入らないよう配慮しました。窓下の白い壁は背景となり、花や季節の飾りを引き立てます。

LDKへ進むと、ペンダントライトと丸テーブル、庭向きに配置されたソファ。

美しい照明や木の家具が暮らしに寄り添います。

LDKと隣接する畳スペースは、普段はリビングの一部として開放的に、引戸を閉めて個室としても使えるようにしています。また、仏間をこの空間に設けて、ご家族が自然と手を合わせられる、日常の中に溶け込んだ場所としています。

撮影に伺った日、素敵なおひなさまが飾られていました。ふだんの暮らしの中でそっと目に入る場所に、季節の飾りを置ける余白があること。その余白が、日々に静かな彩りを添えてくれるのではないかと、あたたかな気持ちになりました。

ダイニングからキッチンを見たところ。
キッチンとダイニングの間に設けた作業台は、買い物帰りの食料品を一時的に置いて冷蔵庫へしまったり、配膳前の料理を並べたりと、日々の家事に便利に使えます。

造作キッチンが空間と暮らしにやさしく馴染みます。

キッチンの横には書斎スペースを設け、リモートワークに活用しています。

洗面化粧台と洗濯機、手前にガス衣類乾燥機の「乾太くん」と収納スペース。これらの造作はすべて、木の家に調和するよう家具職人さんに製作を依頼しています。

「乾太くん」は、雨が続く季節や来客で洗濯が干せないときなどに活躍する、えん建築舎のお施主様の中でも採用されることが多い設備のひとつです。洗濯機の上に配置することも多いのですが、スペースに余裕がある場合は、今回のように床から80~85㎝の天板に載せると、衣類が取り出しやすく便利です。「乾太くん」の上下には、それぞれの収納物に合った収納スペースを設けて、暮らしやすさを高めています。

ソファに座ると、視線の先には深い軒のかかる広縁と小さな庭が広がります。木塀が外からの視線をやわらかく遮り、落ち着いて過ごせる空間です。

駐車場から勝手口へとつながる小さな階段。内と外を短い動線で結ぶ、日常使いの動線です。

駐車場は、コンクリートと石を組み合わせ、単調になりすぎない雰囲気と、スムーズな車の出し入れを両立させています。

春の芽吹きを待つ、雑木。

 

【 設計主旨 まとめ 】

土地と向き合い、
眺めと居場所をつくる

敷地は南面道路に面し、高低差のある土地。
遠い将来の車椅子利用までをも見据え、後からでは変更が難しい玄関の位置は慎重に検討し、高低差を無理なく進めるスロープの傾き(長さ)としています。

 

また、「家の中」だけでなく、車で帰宅してどう駐車するか、どのような景色を見て過ごすかなど、“外部との関係性”も大切に設計しています。
南側からの視線と、東側の空き家への景観に配慮して、水回り空間を東側にまとめ、LDKと寝室を敷地中央から西側に配置。リビングと寝室は、道路から距離を取りつつ、大きな窓の先には庭と木塀を設け、光と風に包まれながらも、落ち着いて過ごせる空間としています。

 

南面には3台分のゆとりある駐車スペースを確保しました。
以前の住まいと比べ、日々の車の出し入れがしやすくなり、日常のちょっとした負担の軽減にもつながっていれば嬉しいです。

木のぬくもりと、居場所の多様性

「木のぬくもりの中で、シンプルに暮らしたい」という思いに応えるため、素材感を大切にした設えとしました。
庭に面したLDKには深い軒と長い縁側を設けて、内と外とをやさしくつなぎます。
季節の草木に目をやり、雨音を感じ、日差しの移ろいを味わう。そんな日常のひとコマを、住まいが自然に作り出してくれると考えています。

 

LDKと隣接する畳スペースは、普段はリビングの一部として開放的に、引戸を閉めて個室としても使えるように。また、仏間をこの空間に設け、ご家族が自然と手を合わせられる、日常の中に溶け込んだ場所としました。

暮らしやすさを支える、
動線と収納計画

玄関からは「ホール」と「キッチン」へと分かれる2つの動線を設け、買い物帰りの動きをスムーズに。

ウォークインクロゼット、パントリー、シューズクロゼット、押入れなど、随所に収納を配置し、暮らしやすさを高めています。

また、洗濯動線にも配慮し、乾燥機・室内干し・外干しが無理なくつながる実用的な配置です。

住まいの温熱環境を整える安心

珍しくこの地にも雪が舞うような寒い日にも、1階のエアコンひとつを軽くつけるだけで、家全体が暖かくなりました。これは、壁・床・天井、窓の断熱・気密性能、そして間取りの工夫によるものです。

 

築40年になる私の実家がそうなのですが、玄関ホールから廊下を通って各部屋へ向かうつくりで、部屋の中は暖かくても、廊下に出ると一気に寒い。トイレやお風呂もまた、冬場は思わず身構えてしまうような冷え込みがあります。

 

当時の住まいが、このように部屋を小さく区切っていたのは、必ずしも断熱や気密といった性能を前提にしていなかったこと、そして日本の気候や暮らし方に合わせた工夫から生まれたものでした。昔の家は、家全体を均一に暖めるというよりも、人が過ごす場所を中心に暖を取る「局所暖房」の考え方が基本でした。こたつや火鉢、ストーブなどで身のまわりを暖め、使う部屋だけを閉じて過ごす。そのため、空間を細かく仕切る間取りは、限られた熱を無駄にしない合理的な知恵でもあったのです。

 

現在、住宅性能が大きく向上し、断熱性や気密性は昔とは比べものにならないほど高くなりました。しかし、住まいの快適さは、性能の高さだけで決まるものではないと私は考えています。たとえば、玄関まわりで冷気をやさしく遮り、居住空間へ持ち込まないなど、「外から入る冷たい空気をどこで受け止め、どこまででとどめるか」に配慮した間取りの工夫がとても大切だと考えています。

 

 

 

お施主様の出会いとこれから

お施主様との出会いは、以前、えん建築舎で建てられたお施主様とのつながりがきっかけでした。
もともと木の家の佇まいがお好きであったことと、信頼できる方からのご紹介があり、家づくりの計画が動き出しました。

「いつまでも、楽しく、心地よく」
住まいの心地よさは、「家」の間取りや性能だけでは完結しません。
どんな土地に建つのか、道路や周辺環境とのつながり方、庭やアプローチ。
そして、年月とともに風合いを増していく自然素材の表情や、家族で「いま」を大切に重ねていく日々の時間。 
今と未来をみすえて、変化を味わいながら、時を重ねていく。
この住まいが、ご家族のこれからの時間をやさしく受けとめ、心地よく、楽しい日々が重なっていく場所であり続けることを願っています。

実例集